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『モンスターズ』光武蔵人監督インタビュー

無差別乱射事件を犯した少年と、その事件で娘を殺された父親の行き詰まる一夜を描いた新感覚のシチュエーション・スリラー『モンスターズ』。この作品を企画から立ち上げて、すべてをハリウッドで撮りあげたのがロスアンゼルス在住の光武蔵人監督。こだわりのシーンの舞台裏と、ハリウッドで映画を撮る苦労を存分に語っていただいた。

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――『モンスターズ』という映画を撮ろうと思ったきっかけはなんでしょうか?

光武 5年位前から、撮りたい作品の企画があって動いてたんですけど、それが5000万円くらいの予算がかかる感じだったんですね。でも、それが1000万くらいしか集まってない段階でバラさなくちゃいけなくなって。それで投資をしてくれる方に謝りにいったら、だったら1000万円で撮れるモノはないかって。じゃあ、同じテーマで別モノをやったほうがいいかなっていうのが出発点ですね。

――5000万円でやろうと思ってた作品ってどんなのですか?

光武 ひとことでいうと「チャンバラ・ウエスタン」みたいな。

――最高じゃないですか! 『シックス・ストリングス・サムライ』みたいな?

光武 そんな感じかもしれないですね。『サイレント・ソード』っていうタイトルで、家族と子供を殺されて、自分もノドをナイフで突き刺されて声を失ってしまった日本人の男性が主人公。日本で剣の修行を積んで、8年後に復讐でアメリカに舞い戻り、バッサバッサと砂漠のギャングを殺していくっていうストーリーなんです。それが予算的にムリだったんで、だったら密室劇かなっていうのが『モンスターズ』のがきっかけなんですけど。

――でも1000万円で撮るのは大変だったんじゃないですか?

光武 もうギリギリでしたね。今回は自分たちのチャンレジとして、アメリカ映画俳優組合【Screen Actors Guild。通称SAG(サグ)】に所属してる役者を使ってやるというのがあって。その規定に沿いながら撮るのが、非常に大変でしたね。

――拘束時間が決まってるとか、そういう事ですよね。

光武 まさにそういう世界です。基本拘束が8時間で、9時間目からはギャラが1.5倍。11時間目からは2倍になって最大拘束が12時間まで。12時間使ってしまった場合は、次は12時間たたないとセットに呼べない、とか…。

――でも、映画の撮影なんて絶対に遅れが出ちゃいますよね。

光武 だから助監督の重要な仕事のひとつが「ちゃんと時計を見ること」なんです。何時間目のタイミングでランチをいれなくちゃいけないとか。『モンスターズ』は撮影期間が18日間だったんですけど、そういう意味では役者さんが頑張ってくれたんで、スケジュールから遅れることはなかったですね。

――予算の関係で密室劇にした、ということですが、テーマに「復讐」を選ばれた理由は?

光武 復讐ものが好きだというのもあるんですけど、アメリカでずっと住んでると、犯罪者が事件の主人公になる風潮あって、それがずっと気になってたんですよ。でも事件の主人公は被害者じゃないといけないと思うし、犯人は被害者のために裁かれるものだと思う。そういう感受性が薄くなっている世の中に一石を投じることができればなぁ、ってところはありますね。

――『モンスターズ』は、実質的に登場人物がふたりの密室劇じゃないですか。それでドラマティックに展開するのって、けっこう大変だったんじゃないですか?

光武 この作品はもともと舞台劇なんですよ。モーテルの一室で3日ぐらいに渡った話だったんですけど、それを煮詰めて一晩の出来事にして。モーテルだと狭いし、壁とか動かせなかったりするんで、場所を倉庫って形にすればカメラアングルも増えるんじゃないかなっていうところで。

――とはいえ、倉庫も閉鎖された空間ですよね。それでもすごく広く見えたり、画に緩急があったんで、カメラワークがいいなぁって。

光武 いま見るとちょっとカメラの動きがゆっくり過ぎるなって反省する面もありますけど、当時はヨーロッパ系というか、ああいうアプローチに凝ってた部分があって……。

――でも、すごい勢いでカメラが回り込むシーンもありますよね(笑)。

光武 あれは全部手作りなんですけど、24PのミニDVで思いっきりぐるぐる回して。

――メイキングを観ると、役者さんにハーネスでカメラを付けて表情のアップを撮ったりしてるじゃないですか。あれもスゴイですよね。

光武 あれは『レクイエム・フォー・ドリーム』でジェニファー・コネリーがエレベーターに乗ってゲロを吐くっていうシーンで使ってたやりかたなんです。でもそれをパクるだけじゃつまらないんで、今回は二人の役者にそれぞれ装置とカメラを付けて、会話をさせたんです。これは多分、僕が世界初じゃないかと(笑)。『モンスターズ』は基本的に二人の会話劇なんで、どんなにパフォーマンスがよくても撮りっぱなしだと飽きちゃうと思ったんですよね。それでやっぱり重要なのはカメラワークかなっていうのがあって。話がちょっとゆっくりになりかけたときに変な絵を入れてみたりとか、それでお客さんのアテンションを引きつけられればと。でも、役者の演技にカメラが助けられた部分も大いにありますね。

――主人公ふたりの鬼気迫る演技も見どころですよね。

光武 役者は普通にオーディションで決めたんですけど、少年役のカイルのほうは部屋に入ってきた瞬間ビビっときましたね。オヤジのほうは最初は、ビール腹でちょっと情けない感じの男をイメージしてたんですけど、でもディーンを見て、内に秘めたものを感じたんで、自分のイメージをディーンに歩み寄らせる方向のほうがこの作品は成功するのかなって思って。

――カイルは丹精な顔立ちでいい雰囲気ですよね。殴られた顔もよかった。でも、あの鼻血の特殊メイクはすごいと思いましたよ。鼻にチューブを通して、鼻血がずっと出続けるんですよね。


光武 そこは特殊メイクのマイクと相談して。「流れ続ける鼻血」って映画でみたことないじゃないですか。普通は固めた血ノリを鼻の中に入れて、熱で溶けてタラっと流れるだけなんですけど、鼻の骨が折れて、血が止まらないっていうのがないねって。マイクは『スパイダーマン』とかもやってる実力派で、70年代とかの特殊メイクホラーオタクなんですよ。だから一緒に話してるとエスカレートしちゃって。

――銃撃シーンも異様にリアルでしたよ。ほんの一瞬しか写らないですけどインパクトはありますよね。

光武 あそこには8000ドルかけました。贅沢は本当にできない作品だったけど、そこだけ贅沢させたもらったっていう。細かいことをいうと、あのシーンの拳銃はグロックの9ミリ弾なんで、本当はあそこまで頭がふっとばないんですよね。でもそこは派手にしようってことで(笑)。本当は空砲とか本当の銃でやりたかったんですけど、そうなるとファイヤーのスペシャリストを雇ったりしなくちゃいけなくて。そうすると消防署の許可も必要になってきて、それは予算的に無理だったんですよ。なので、香港製のガスでブローバックする銃を使って、あとからCGで薬莢と煙を足したんですけど。そういう細かいところはほんとこだわって。

――ますます1000万円で作ったとは思えないですね。

光武 さらに細かい話をしますと(笑)、1000万円級の映画だと「リミテッド・エキシビジョン・コントラクト」というカテゴリーにして、商業的公開ができないっていうカタチにするとSAGの俳優たちを三分の一くらいの値段で雇えるんですよね。『モンスターズ』はそれで撮ったんですが、今回は日本でDVD化されて商業的配給になってしまうので、そうすると1つ上の「ウルトラ・ローバジェット」っていうコントラクトにステイタスチェンジしなくちゃいけないんですよ。その報告がめんどくさくて、いまやってる最中なんです。インディペンデントな映画制作者としては、SAGってやっぱり撮り辛いんで、大嫌いなんですけど。

――日本って結構そういうところ適当な感じですけど、ハリウッドはやはり違うんですね。

光武 友達のある映画監督がSAGの俳優を使って、1000ドルぐらいで短編映画を作ったんですよ。その作品がたまたま売れちゃって、でもSAGに報告するのを忘れてた。そしたらSAGからきた請求が5万ドルくらい(笑)。そんなのとてもじゃないけど払えないって裁判沙汰になりかけて、じゃあ権利はSAGがいただきますって、その作品の権利を持ってかれちゃったんですよ。

――相続税払えないからって、土地ごともっていくみたいなやり方ですよね。だからSAGって『チーム☆アメリカ/ワールドポリス』であんなにギャグにしてたんだ。やっと意味がわかりましたよ!

光武 SAGは地球上で一番パワフルな労働組合って言われてますよ。ドナルド・レーガンも、SAGの組合長から始まって大統領に登りつめたんですよ。

――でも実は光武監督は役者としてSAGに登録なさってるとか…(笑)。

光武 本意ではないんですけど…(笑)。自分が撮る作品で、役者が確定しないのがイヤだったんで、演者としても出るようになっただけなんです。『モンスターズ』のあとに短編を撮ったんですけど、それをみた友達がエージェントを紹介してくれて、監督としても勉強なるかなって思って契約したんですよ。監督としてはエージェントがいないのに、俳優としてはSAGに加入っていうのは非常に複雑なんですけど(笑)。

光武蔵人 プロフィール
小さい頃から漫画家を目指すが、映画『激突』をテレビ放映で見てからというもの映像世界に魅了され、映画監督を志すようになる。
高校から単身渡米。San Francisco Art Institute(サンフランシスコ芸術大学)を経てCalifornia Institute of The Arts(カリフォルニア芸術大学)大学院を卒業。修士号を修得。在学中に制作した短編映画「The Killer, The Wounded, And The Lair」は各方面で高く評価される。
コーディネーターなどの職業を経て長編デビュー作『モンスターズ』を監督。俳優としても活動し、米ABCネットワークの人気番組「Ugly Betty」第4話「Swag」に出演した。

『モンスターズ』作品紹介
高校生による銃乱射事件が発生し、2人の教師と8人の生徒が犠牲になった。この事件で愛娘の命を奪われた父親は、自らの手で犯人への死刑執行を行なおうと、護送中の犯人を誘拐して砂漠の工場跡地に監禁する。だが、犯人は罪の意識も無ければ、後悔も反省も全くしていなかったのだ。そこで、犯人に犯した罪の重さと奪った命の尊さを教えようと考えた復讐鬼は、暴力と拷問による"恐怖の教育"を開始する…。
ホラー映画の第一人者、清水崇監督に見い出され、「呪怨2」のハリウッドリメイク版「THE GRUDGE2(原題)」のシカゴ撮影部分の助監督に抜擢された俊英、光武蔵人監督による、ソリッド・シチュエーション・スリラー。『銃社会』や『少年犯罪』に対する問題を提起し、更に犯罪被害者の家族が抱える怒りや葛藤、そして復讐と暴力の果てにある空虚さを描いている。出演は、スターとの共演歴を多数持つ演技派のディーン・シモーン、人気ドラマ「エンジェル」などで活躍するカイル・イングルマン、他。

取材:ジャンクハンター吉田、大谷弦
文:大谷弦
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『モンスターズ』

2004年 アメリカ 100分
製作・監督:光武蔵人/製作:ネイサン・マセニー/脚本:クリストファー・J・ハンセン/編集:ジョン・ミグダル/音楽:エドワード・F・ニチコフスキー/美術:ジョン"バード"・ピーコック/撮影:小瀧裕之
出演:ディーン・シモーン/カイル・イングルマン/ボニー・ミューヘッド/ゾーエ・ケラー/ローレン・ヒューズ/ライアン・シックラー

▼発売情報
発売日:2007年3月30日
発売元:マクザム
価格:3.990(税込)

●特典(約120分)
コレクター垂涎の魅力的コンテンツが満載!!
・未公開短編『The Killer,The Wounded,and The Liar』『無常刃』に加え,予告編&メイキング映像収録 
・監督・プロデューサー・編集によるオーディオ・コメンタリー収録
・画コンテ&スチールスライドショウ
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